第一回文化芸術まちづくりゼミ レポート(前半)

2012年6月9・10日の2日間、第一回文化芸術まちづくりゼミを開催しました。

 

第一回は、講師としてまちとしょテラソ館長の花井裕一郎氏、現地ゲストとして朝日新聞記者の東野真和氏をお招きし、様々な話が展開されました。

 

一日目の9日の講座の会場は安渡小学校体育館です。

 

はじめの開会宣言として、お忙しい中、碇川町長にお越し頂き、ご挨拶をお願いしました。

昨年以来、土地利用に特化したまちづくりを行政、町民とも進めてきましたが、その土地の上にどういった空間のまちづくりをしていくか、つまりソフト面の復興の重要性についてお話をいただきました。復興は社会インフラの復興と、人間の復興、この二つの両面があって復興が成し遂げられると、力強いお言葉でした。

災害列島日本にとって、大槌町を再生させることが日本の国力になるのではないかと、大きなビジョンを掲げ、復興への思いを語られました。

 

 

続いて、本日のメイン講義である、花井裕一郎氏によるレクチャーです。

長野県、小布施町にある町立図書館【まちとしょテラソ】は所謂「図書館」とはちょっと違います。そのまちとしょテラソがどのような経緯で立ち上がっていったか、今どういう取組みをして、町の中でどういう役割をはたしているのか、そのあたりを詳しくお話していただきました。

 

以下、花井氏の発言内容を要約し、少し紹介させていただきます。

 

 

まず、図書館=本を借りるだけのところではなく、本来図書館というのはコミュニティにはとっては欠かすことのできない教育システムです。図書館の職員がサービス業であると思わなければいけません。図書館法という法律の中に「奉仕をする」というのが書かれており、ここの意識がすごく薄れてきています。あとは「まちづくり」の一環であり、図書館には人を育てていくという使命もあります。

そういう図書館の機能を満たすためにも、図書館建設は町民の方と一緒に作り上げていきたい。町民の人たちに「図書館を作りますから集まってください」とお知らせしたところ、50名の方が集まり、図書館建設運営委員会というのを結成しました。50名のうち約1割が町外の方。たくさんの方が、小布施町がどんな図書館を作るのか見てみたいと参加しました。

 

図書館の理念は「交流と創造を楽しむ文化の拠点」です。子育ての場と学びの場、情報発信の場、そして交流の場。「交流」は小布施町のキーワードです。

50人が毎月議論をします。図書館はスタッフだけが運営するのではなくて、私たちも運営者になるんだという気持ちで運営を考えよう。引っ越しをする時にも町民の力を借りました。

 

現在は、50名の建設運営委員会は18回の会議をもって解散し、これからの運営を考えていく「運営プロジェクト」を発足。町外の人含め、約10名の方が所属されています。月に1回2時間程度、この人達とスタッフがミーティングをします。大体3ヶ月先を見ながら、こんなイベントをやろう、じゃあこのイベントをやるにはこんな本を買った方がいいんじゃないか。そしたらこんな人を呼んできたらいいんじゃないか。そういうことを毎月やりながら運営を成立させています。

 

「交流と創造を楽しむ文化の拠点」という理念を、小学生とか高齢者の方に説明するのは大変難しい。そこで考えたのが「わくわく」でした。そのわくわくを演出するのがスタッフの仕事です。館の中をどれくらい編集するか。そして、館の外、町中をどのように編集してまた館につないでいくかという役割をスタッフが担っています。

 

取組みとして、便器を素手で磨いています。そしてそこに愛着がでて、そこを利用する人たちへの心がけが全然変わってくる。もう一つ、入り口付近のカウンターに館長席があります。館長室もありません。公募で選んだ館長なんだからやっぱり人前にどんどん出て行かなくちゃと町民の方々が決めました。隣に丸いテーブルがあり、ここは話していても何を食べても良いことになっています。本を見ながらポリポリとおばあちゃんが漬け物を食べ始めたりもします。「おいしそうですね」「館長も食べるかい」と必然的に交流が生まれます。隣が小学校のグランドですから、小学生がのどが乾くと図書館に入ってきてお水を飲んでいきます。図書館利用としては間違っていますが、ここに来たらこういうのがあるよと、そこに何があるという目的をわかっているというのはすごく嬉しいことです。

 

図書館の中でデジタルアーカイブ事業というものを持っています。「オーラルヒストリー」は、町民のみなさんでキーマンにインタビューをします。6時間に渡るインタビューをして、それをテキストとビデオテープに保存しています。テキストの方はiPadで見れるようにしています。今は20~30人程のインタビューをとっています。

また、著名な方々にセミナーをやっていただき、許可を頂いた先生のものは図書館でDVD化します。また町が主催している講演会なんかも、取材申込をしてOKが出ればまたDVDにして図書館で公開していく。取材に来てくれといわれるときもあります。その場に居なかった人もその場を共有できるように図書館はちゃんと資料を作っていくという使命があると思っています。

 

「小布施ちずぶらり」という古い地図を見ながら現在の小布施町を歩くという試みも行っています。こういうふうにデジタルアーカイブをやることによって町がすごく深く見えてきます。その作業をするのが図書館であり、そしてひとつひとつを繋いでくのも図書館。それがハブとしての図書館ではないかと思っています。図書館は情報を自分たちで作りだして発表して発信していくという機能も必要だと考えており、そのひとつで「小布施正倉」という古文書とか古い写真などを蓄積したデジタルアーカイブのデータベースもあります。

他に「まちじゅう図書館構想」というのがあり、一箱古本市というフリーマーケットをやっています。本を売るのが目的ではなくて、実はこの人達と話をするのが楽しみでみなさん来られます。この人の本好きだと思うとその人とすごく交流が始まります。

 

図書館の館内ではどこでもシンポジウムをやったり絵本を読んだりしています。みんなでごはんを作っていただきますと食べましょうという企画をやったり、アートWSを年に4回ぐらいやっています。今はテラソ美術部というのがあり、今月のテーマは「傘」で、いらなくなったビニール傘にみんなでペイントをして、傘をさして、最後はその傘をバッグにしてしまうということをやっています。

議員報告会も図書館でやっています。どうしても町民の人が聞きにきてくれない。図書館でやれば偶然来た人が聞いてしまうだろうという議員さんの目論見がずばり当たり、すごく聞いてくれます。

 

最後にまとめです。図書館はおもてなしをする。そしてそれがコミュニティをデザインすることに絶対つながります。そして一番大事なのが、「あなたは本が好きですか?人が好きですか?」といわれた時に必ず人が好きではないとだめです。結局お客さんにどれくらい寄り添えるかですね。お客さんに寄り添うというのが大事なんじゃないかと思っています。なんとなく側にいながら、的確なメッセージを出していきたいです。

 

 

以上、一部ではありますが、花井氏のレクチャーのレポートでした。

参加者のみなさんは興味津々の様子で、真剣に拝聴されていました。

 

まちとしょテラソについて、詳しくはホームページをご覧ください。

http://machitoshoterrasow.com/

 

花井氏のレクチャー終了後、モデレーターのアサダ氏の進行により、対話が進みました。その中で、参加者からも数点質問がありました。

 

■Q. 本よりも交流を重視し、町民の方々と議論を重ねながら図書館を作るのは非常に難しいところもあったかと思いますが、どういうふうに工夫して進めましたか?

■A. 図書館と交流センターを融合させたような機能に馴染めない人も多く、一時は意見が割れて町がまっ二つになると心配でしたが、要はひとつひとつ丁寧に聞いていくしかないです。今回の会議では全員が納得しないとできないと思っていましたので、ひとつひとつ解決していくやりかたを選びました。

 

■Q. デジタルアーカイブの話で、「まちじゅう図書館」などはもう箱(建物)だけの話ではなくていよいよ箱の中で交流の話になりますが、図書館の立場で地域資源を見つけていく中で、どういう目線で町をみていくようになりましたか?

■A. とにかく人と会うことが多いんです。朝の通勤路の挨拶やラジオ出演などで町民の方には僕が館長だということが知られています。そのことからどんどん町に接近していって、それをスタッフにもやらせています。職員が机についている必要はないと町長が言うんですよ。だから、祭りがあったらどんどん手伝いにいきなさいというし、商工会に所属しなさいとか青年会に所属しなさいとか、消防団に入りなさいとか、どんどん町の若い職員を町に出させる。そういうことの積み重ねでうちのスタッフ含めみんなの情報収集が大きくなっていってるのかなと。

 

■Q. 町にIターンで引っ越してきて、まちづくりに参加している人が増えている印象を受け、図書館自体も町内と町外の人をつなぐハブになっていると実感しました。状況は違えど、被災地の中でもこういう塾も含めて外部からやってきている人たちが何かをするっていうことと、そこの町でやってきた人が重なり合うというようなことは各地で起きているわけですけれども、そこのつなぎ目にたっているというのはおもしろいなと思いました。

■A. そうですね。よく言うのは、半分冗談半分本気なんですが、小布施町に来てなにかやるときは図書館通してくださいと言うんですよ(笑)人を繋ぎますから。いろんな方が町を視察に来られ、何が知りたいですかと聞く訳です。そうすると絶対に僕たちが放っておいても繋がる。どんどんコーディネートすることを心がけています。

 

■Q. 小布施町の素晴らしいところは、町民さんがなんでも参加することだと思います。例えば被災地でのボランティア活動に、どういう風にしていけばもっと町民の方に積極的に参加していただけるのかということについて何か案などがありましたらお聞きたしたいと思います。

■A. 僕らがやったことっていうのは、これは一事例ですが、声をかけにいきました。一緒に掃除しませんかと。高齢者の団体の人達だったりとか、高齢者の中のキーマンとか。この人が動くとこの人の周りに10人いるよねっていうキーマンに声をかけていって賛同を得るというのが大きいんじゃないかな。そのテーマにあったキーマンをチョイスするというやり方をどこかで僕はしていると思うんですね。この人にはこういう伝え方をしなきゃ伝わらないんだとか、何通りも伝え方があるんだというようなことが小布施町に住むようになってからわかったような気がします。

 

■Q. 長野県は教育文化が非常に優れているという印象があります。花井さんがいらっしゃる前までの図書館の運営状況はどうでしたか?

■A. 今までの図書館は夜は開いていなかったので、子供たちしか来れなかった。町長には来館者数を3倍にし、今まで来れなかった人に来てもらえるようにとお願いされました。みなさんの意見を聞いたり、予算も見ながら開館時間を検討し、夜は20時までオープンすることにしました。交流人口がどんどん増えていることが数字としても出ています。

 

■Q. 町が直接管理をしている施設が、例えばグッズ販売とか、町民が主体になって組み立てていったことに驚くところがあります。町直営の公共施設でそのようなことをされることが新鮮に感じるのですが、町の受け入れが寛容なのでしょうか?

■A. 町の方から自立した図書館を目指してほしいと言われました。その中の一つのアイデアとして、グッズや本を販売しています。もちろん図書館法に違反していないことも証明しています。町内に本屋がないのもありますし、町内でもニーズがある動きになっています。

 

 

花井氏のリアリティのある話に、大槌町民の方も興味や疑問がいろいろと出て、活発に意見がでました。非常に充実したレクチャーでした。

 

 

 

ここで、第一回文化芸術まちづくりゼミ1日目、前半が終了です。

続きは後半のレポートにて。

 

 

記:ひょっこりひょうたん塾事務局 安川雄基

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