監修者レポートコラム 【文化的な場づくり コミュニケーションのバリエーション】

8月25日ー26日。二日間にわたり開校したひょっこりひょうたん塾の文化芸術まちづくりゼミ第二回。少しずつ町民の方の参加も増え、初日は曇りのち雨天ではあったが、復興ツーリズム、そして二日目は晴天の中、赤浜小学校体育館で座学を展開した。講師は毎日新聞学芸部記者の手塚さや香さん、そして現地ゲストとして大槌STANDING STANDING(以下、STANDING×2)の方々をお招きして展開。本稿では主に、二日目に焦点を当ててお伝えする。(語られた内容詳細は事務局のレポートを参照していただくとし、ここでは本事業の監修者という立場での考えを述べる  )

 

手塚さんをお招きしたのにはいくかの理由があり、ひとつには彼女がかつて岩手県盛岡支局に勤務していたことで、東北との繋がりを強く持っているということ。そして今回の本塾のテーマである「文化芸術でまちづくりをする」ということに関して、記者として少なからず各地事例を取材されてきた経験があること。そしてその延長線上に、今回、東北の被災地での住民に対する聞き書きを行ってきたこと。被災地の現状に丁寧に寄り添いながらも、一見、復興という目的からすれば捕らえ所のなさそうな「文化芸術」という関心事項をどのようにそこに絡めて考えることができるか。まさに塾の取り組みに並走してくれるようなゲストだと考えたのだ。彼女は、主に過疎化した村々や島々で行われる芸術祭での制作プロセスに焦点をあてた事例を紹介してくれた。例えば、新潟県の「越後妻有トリエンナーレ」や瀬戸内海の「瀬戸内国際芸術祭」など。その地域独自の生活や風土を資源として再発見する。その視点としてアーティストの活動や作品が展開される。回を重ねるごとに地元住民と外部からやってきたアーティストやボランティアたちが徐々に交流を深め、地域に新しい価値観、あるいは古いと思われてたが違った視点で意味を吹き返された価値観が生まれていく。そしてある人は長期に渡り滞在し、またある人はこの地を気に入り移転してきたり。こういった文化芸術におけるプロジェクトは、時として、社会的にマイノリティとして生きてきた人々とも価値を交換しあうことがある。例えば瀬戸内の大島に住む元ハンセン病患者たちとの取り組みなどがあてはまるが、手塚さんが紹介した事例に限らず、肢体や知的、精神に障害のある人々との作品制作を通じたコミュニティ形成、何かしらの事情で社会的に就労が困難な若い人や、野宿生活者との語り合いの場づくりなど、まさに全国各地で、一見、「これも文化芸術を介した取り組みなの?!」と思われるようなプロジェクトが展開されている。芸術祭というものは、絵画や彫刻や建築など、目に見えて「ああ、これはアートだなあ」とわかるものが多いが、しかしもっと目に見えない、まさに「人と人との多様で創造的な関わり方」「こんな風に色んな人と話をして、繋がることができるんだ!」といった、そのコミュニケーションのバリエーション自体が問われることも、彼女の紹介した事例や本塾で少しずつ伝えていきたい「文化芸術」の重要な役割だと考えている。

 

話は変わって、現地ゲストのSTANDING×2さんには代表の岡野茂雄さんを中心に、6月に開催された「おおつちありがとうロックフェスティバル」のふりかえりをしていただいた。地元の30代半ばを中心としたメンバーで結成された団体(いや、彼らは団体ではなく、自らを「軍団」だと言っている。)震災前から漁業や林業、会社務めなど、各々がこの町で仕事をしてきた。皆子どもの頃からの強い結びつきをもった仲間たち。そして彼らのこれまでの人生を支え続けてきたのが「ロック」だった。若者人口が加速的に減っていく自分たちの町をなんとかしたい。しかし自分たちで何をやったらいいかわからず時間だけが経過していく。そして仲間たちとロックを聴きながら、好きなミュージシャンに想いを馳せる日々。そんな彼らがこの町を舞台に動き出したきっかけは震災だった。地元で一番早くに立ち上がった復興団体「おらが大槌夢広場」のメンバーとなり食堂を立ち上げたり、全国からの支援をえるためにミュージシャンからの呼びかけ交渉を行ったり、子どもたちにサッカーコートを準備したり、倒産した漁協の立て直しに奔走したり。そして、今回の大規模なロックフェスの開催にまでこぎつける。STANDING×2を動かしているのは「自分の町のことは、自分たちでなんとかしていく」という考えだ。そしてこの町で生活していきたいと思うひとたち、さらに自分たちの子どもの世代が笑顔で「大槌にこれからも住みたい」と思えること。こういう土壌を、外の人の助けも借りながら、ロックという文化的な場づくりをひとまず成し遂げてみた。実際はいわゆるロックだけでなく、郷土芸能や子どもたちの演劇公演や花火なども含めた、幅広い嗜好や世代に訴えかけるフェスティバルとなった。

 

今回、手塚さんとSTANDING×2に共に語ってもらう中で、岡野さんが「僕らは(手塚さんが紹介してくれた)こういう取り組み好きですよ。意味がわからないってことってワクワクする」と言ってくれたことは企画した立場として素直に嬉しかった。そう、「何かわからないものを楽しむ」という発想が、ポジティブに町を考えるひとつのきっかけになればいいというのはまさに感じるところ。ただ、事態はもちろんそんなに簡単ではない。ここで生活をする多くの人たちがまだまだ「それどころではない」のだから。ロックフェスに関しても「町民の参加が思ったより少なかった」とSTANDING×2。地元に「こんな時にロックフェスなんて」という声がないわけでもないだろう。(実際、町民の参加者から、「そのような意見が町にみられるけど、私は大事だと思う」という応援と感謝の声も出た)しかし、彼らはロックを通じて文化の幅を広げ、町民が様々な立場で復興に関われるような糊しろを生み出し、徐々により多くの人に支持され、町民自らが自発的に動いて、外の人たちにこれからも継続的に来てもらえるように、感謝を伝える。そういったことを地道に続けていくことだろう。手塚さんの紹介された事例も交えることで、より広い視点で、復興に関わる手法のバリエーションを創造的に増やしていくことを念頭に置きつつ、淡々と地道に、本塾も進めていくことにしたい。

 

文:アサダワタル(ひょっこりひょうたん塾 監修担当・モデレーター)

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